第一章 相対取引(あいたいとりひき)

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「また、後で」  嬉しくて「はい」と返事をしてしまった。  コンビニの前の信号が変わったので、私は一礼すると早足で横断歩道へ向かう。ひとみさんも後から着いてくる。 「ごめん、僕もこっち」 「そうなんですね」  まだ少し一緒にいられると思って嬉しくなる。  それでも、家は近いのですぐに着いてしまった。ひとみさんも立ち止まる。 「律の家、ここ?」  私の住んでいる賃貸マンションを指さしてひとみさんは言った。  頷く。 「僕の家は、こっち」  ひとみさんは道を挟んで真向かいにたつ分譲マンションを指さした。 「全然、会わなかった……? よね?」  ひとみさんが自信なさげに言うから、おかしかった。 「コンビニ以外では、会ったことありません」  私は断言した。 「でも好都合、家に帰ったら連絡してね。下りてくるしさ」  私は、頷いた。
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