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「ツイート見たけどさ。運命さんに会えたの?」
美佐子はベートーヴェンさんを運命さんに言い換えている。
私は、素直に頷いた。
「すっごく優しくって、やっぱりカッコよかった」
「いきなりデートとかマジ謎い」
デートという響きに、顔が熱くなる。
講義の内容はほとんど頭に入ってこなかった。
美佐子は帰る間際に「私のコートの方が、今日の服に合ってるから」と貸してくれた。
その代わりに「運命さんの写メ待ってるからね」と言われた。
まともな化粧道具もないから、講義の後で美佐子にしてもらった。
少しは、大人っぽくなったかなと思いながらも、自分が自分でないような恥ずかしさがあった。
家に帰ってバッグをかえてから、ひとみさんに電話をかけた。
「早かったね。先に契約書の方済ませたいから、マンションの下で715号を呼び出して」
「わ、わかりました」
私はバッグの中の印鑑と通帳を確認した。
マンションから出て、真向かいのマンションに入る。
部屋番号を押すと「あれ? まあいいや」とひとみさんの声が聞こえて自動扉が開いた。
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