第一章 相対取引(あいたいとりひき)

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 エレベーターの中でため息をつく。  緊張していた。  インターホンから聞こえたひとみさんの声も、なんだか気になる。  7階でおりて、左右をみて数字の並びを確認していたら、少し奥のドアが開いてひとみさんが顔を出した。  頭を下げて駆け寄る。 「雰囲気違うし驚いた。昼は化粧するの? 」 「やっぱり、変ですか? 友達にしてもらったんですけど……」 「変じゃないよ。もったいないと思っただけ」  私はうつむいた。 「僕に気を遣ってくれたんでしょ。普段の律と歩いてたら犯罪臭するもんな」  慌てて否定した。 「は、犯罪だなんて、そ、そんな!」 「冗談だから」とひとみさんは笑った。 「とにかく入って、早く買い物に出たいしさ」  慌てて扉の内側に入る。ハンガーを渡された。 「コートはそこにかけておいて」  言われたとおりにウッドポールにかけた。フリルのついたセーターを着てきたので、恥ずかしかった。  ひとみさんの部屋は、とても広かった。広いのに、物が少ない。  私のワンルーム全体の二倍はありそうなリビングと、他にもいくつか部屋があった。
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