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エレベーターの中でため息をつく。
緊張していた。
インターホンから聞こえたひとみさんの声も、なんだか気になる。
7階でおりて、左右をみて数字の並びを確認していたら、少し奥のドアが開いてひとみさんが顔を出した。
頭を下げて駆け寄る。
「雰囲気違うし驚いた。昼は化粧するの? 」
「やっぱり、変ですか? 友達にしてもらったんですけど……」
「変じゃないよ。もったいないと思っただけ」
私はうつむいた。
「僕に気を遣ってくれたんでしょ。普段の律と歩いてたら犯罪臭するもんな」
慌てて否定した。
「は、犯罪だなんて、そ、そんな!」
「冗談だから」とひとみさんは笑った。
「とにかく入って、早く買い物に出たいしさ」
慌てて扉の内側に入る。ハンガーを渡された。
「コートはそこにかけておいて」
言われたとおりにウッドポールにかけた。フリルのついたセーターを着てきたので、恥ずかしかった。
ひとみさんの部屋は、とても広かった。広いのに、物が少ない。
私のワンルーム全体の二倍はありそうなリビングと、他にもいくつか部屋があった。
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