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乙は、講義および甲の認める用件以外を理由として甲の求めを断ることはできない。
「僕が必要とする時は、いつでも来なきゃいけないってなかなかハードでしょう」
人見さんの問いかけには、返事をしなかった。
もう一度契約書に目を通して、署名欄に名前を書いた。バッグから印鑑を取り出して、名前の後ろに押す。
「律の印鑑、名前だけなんだ。かわいいなあ」
私は、恥ずかしくてうつむく。
もう一通同じ物をつくった。
人見さんも、甲の欄を書き込んで、契約書を一枚ずつ別の茶封筒にしまった。一方を渡された。
「律は若いから、署名捺印の重さがわかんないんだろうけど、もっとよく読まなきゃだめだよ」
「読みました」
「じゃあ、律はどこで何をするって書いてある」
茶封筒から取り出してもう一度読む。
「場所もこの部屋とは限定されていないしね。ほら、ここ、甲によって指定された場所にってあるでしょう。それに、甲によって依頼のあった用件について、その内容が公序良俗に反する場合を除き、直ちに履行するものとする」
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