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「一応、そこは読んで大丈夫だと思いました」
「本当に? 桜島を背景に描きたいからって鹿児島に呼び出すかもしれないし、公序良俗に反しないって結構範囲広いよ。交通費込みだよ」
「私、どうしたらいいですか?」
困って、みつめる。人見さんは目を細めた。
「僕の依頼を何でも引き受ければいいだけだよ。今日は、画材を買いに行って食事をして、明日は一日僕と過ごして椅子を探したり……、軽くスケッチくらいはしたいな」
人見さんは「これから三ヶ月くらいの間で、僕が世間の恐ろしさを教えてあげるから」と付け加えた。
「銀行名、支店名、口座番号を書いといて」
バッグから通帳を取り出して、メモにうつす。
「三ヶ月くらいで解放するから、我慢してね」
なんだか哀しくなる。
「書類をしまってくるね。ここにいてもつまらないから出かけよう」
顔をあげる。人見さんは嬉しそうに笑う。
「あっコンビニのバイト、最短でいつ辞められる?」
「今月いっぱいでも……ちょうど辞めようと思ってたので来月のシフトまだ何も入れてないんです」
「今、週何回入ってる?」
「三回くらいです」
人見さんはほんの数秒、目線を横にずらして、それから数回頷いた。
「残り二年バイトを続けて稼げる分は、僕の相手を三ヶ月間毎日二時間するだけでペイできるよ」
「毎日、二時間いたらいいんですか?」
「いやいや、あくまで僕が必要とする時だよ。一日で10時間超えるかもしれないし、何日も会わないかもしれない」
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