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「タバコやめても意味ないんだけど、願掛けしようと思ってさ」
「なにを願掛けしてるんですか」
「人に話したら効果なくなりそうだから言わないよ」
私は頷いた。
下についた。
「ここで待ってる」
私は走って家まで帰った。
外はすっかり暗くなっていた。人見さんの家から私の家まで1分もかからない。ここで暮らし始めてもうすぐ丸二年なのに、本当に会わなかった。それだけ生活のリズムに差があったんだと思う。
私は契約書を自分の部屋のクローゼットにある大事なものをしまう箱に入れ、すぐに人見さんの元に戻った。
「はやいね」
「近いですから」
そうだねと言って人見さんは笑った。
電車かタクシーかどっちがいいか聞かれて、電車を選んだ。
駅まで並んで歩く。
「人見さんはいつからあの家に住んでるんですか?」
「二年。ちょうどここに転勤してきて家を探してたら一部屋売りに出てて、ローンで買った。転勤になったら貸そうと思って。なんかあの時ピンときて買ったけど正解」
「ローン、返しちゃわないんですか?」
「うん、ほっといてももうすぐ完済するしね」
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