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駅について、人見さんは路線図を見上げている。
「画材買いに行くには、少し遅くなったから、食事だけにしようか」
「はい」
「なにか食べたいものある?」
「とくには……」
人見さんが私の方をみたのがわかった。私も人見さんをみる。
「体調悪いの?」
私は「いいえ」と返した。単に胸がいっぱいだからとは言えない。
「体調が悪いときは、遠慮なく言ってね」
頷いた。
「律ってお酒飲める方?」
「実は、まだ飲んでないのでわかりません」
「まじめなんだ」
「母も……あ……の……父も家で飲まないですし、コンパに誘われても行ったことがないですし、サークルは入らなかったので……」
段々恥ずかしくなってきた。これではものすごく根暗みたいだ。
実際、人と関わりを持ちたい方ではない。
唯一仲の良い美佐子はバイトに追われていて、学校以外で会うことはない。
「ねえ、焼き鳥屋って行ったことある?」
「ありません」
「そっかそっか」
人見さんはそう言うと、切符を買って一枚渡してくれた。
「せっかくおしゃれしてくれたけど、焼き鳥屋に行きたくなったから付き合って」
笑顔で頷く。
「絵も描くけど、同時進行で律の初めて集めすることにした」
「は、初めて集めですか?」
首をかしげると、人見さんは私の頭にポンと手のひらをのせた。
「心配しないで、公序良俗に反することはしないから」
つけ加えた意味がわかって、私は顔が熱くなった。
人見さんが声を出して笑った。
「律、本当にかわいいなあ」
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