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PCの画面に、私のギターが映し出された。
『こんばんは!今日は早いね』
『こんばんは!まだ電車の中じゃよ』
PC画面の右側に、コメントが表示されていく。
私は、指で弦をはじいた。
「こんばんは、のりまきさん、いらっしゃい。こころ君、まだ帰ってないんだ。お疲れ様。いつも聴いてくださってる方も、初見さんもいるのかな? コメント残していただけると嬉しいです」
コードをおさえながら、指をならしていく。
『酔っ払ってるってほんと?』
画面に映っていないところで頷く。
「そうそう、初めてお酒飲んだ。それも焼き鳥屋さんで」
私は、PCに話しかける。
どこにいるのかわからない相手だけど、確実にその向こうにいて、私の相手をしてくれている。
『何、歌う?』
私は、弦から指をはなした。
「あー、なんか、恋の歌が歌いたい気分」
『なに?なに?彼氏でもできたあ?』
『まじか!』
「彼氏はできてないよお」
『PCってことは、今日はおうち?』
「そうそう、だから、声をはる歌はなし、しっとり、しっとりな感じで」
画面の文字に話しかけると、コメントが返ってくる。
今の気分に合わなくて、いくつかのリクエストを断った。
『やっぱり彼氏できたんでしょう』
「できてないんだな、残念ながら……ねえ、今日は、ボカロじゃなくてもいい?」
『いいよ』
『おけ』
「ありがと、すっごく歌いたい歌思いついた。恋の歌じゃないけど」
PCに手を伸ばしキーボードをたたく。別ウインドウでコード譜を表示させた。
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