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「好きって言った割に元気なくなった?」
「そんなことないです」
人見さんの横顔をみて、鼻の形がきれいだと思った。
ハンドルを握る手まで素敵で、ついみとれてしまう。運転に集中しているから、気づかれない。
三十分ほど走ってから、高速道路のパーキングに入った。少し歩くと展望台があるらしい。辺りは薄明るくなっているが、今日の日の出は六時四十六分なので、まだ少しある。
車からおりる。海が近いからかさっきよりもずっと寒く感じる。
「風が強いね」
人見さんが嬉しそうに言う。私は身を縮めながら、頷いた。
展望台にたどり着いた。
水平線に、光がみえた。
少し顔をのぞかせた太陽が、海に光の道を作った。私は寒さも忘れその光景にみとれた。
メロディが下りてきて、口ずさむ。
「すごくきれい、誰の歌?」
人見さんの質問にもこたえず、私は、音を見つけては拾っていく。ポケットから、スマホを取り出した。ボイスレコーダーを起動させる。最初からメロディラインを口ずさんだ。
朝日は強い光を放ちながら、水平線から浮かび上がった。
私は隣に立つ人見さんをみた。
優しく笑いかけてくれる。
ニット帽や、頬や肩が朝日に照らされて金粉を纏ったようにきらめいた。
「一緒に写真撮りましょ。日が昇っちゃう」
「え?」
手に持ったスマホを内カメに切り替えた。人見さんに少しだけ近づく。精一杯腕を伸ばして写真をとる。
逆光ではあるが、朝日や海もかろうじて映り込んだ。
「これは、初めてドライブ記念の写真です」
「ドライブ、初めてだったの?」
スマホ画面をチェックしながら頷く。
人見さんは横からのぞき込んで「うわ、間抜け面」と言った。
「律は、かわいいよ」
わざわざ付け足してくれる。
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