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頷く。
車へ戻りながら、人見さんに「さっきの歌なんだけど」と訊かれた。
「えっと……」
恥ずかしくてこたえられなかった。
「まあ、いいや。すごくキレイだなって思っただけ」
つい、口元が緩む。
人見さんは、そこからさらに車を走らせた。高速を下りてからも、海沿いを走る。私は、外をずっと眺めていた。
「港まで行くつもりなんだけどね」
早朝から開いている喫茶店に車をとめた。軽く朝食をすませる。
「早く着きすぎるけど、もう移動しようかあ」
「はい」
また優しく笑いかけてくれた。
人見さんの話だと、港に家具の卸が集まったエリアがあるらしい。椅子を買うだけなのにと思ったけれど、多分、朝日のついでなんだと思った。アウトレットモールもあるから、行こうと言っていた。
まだ、開く時間ではないから、車の中でしばらく話をしていた。
人見さんのしていた仕事の話をきいた。
「人の欲につけこむ仕事だったなあ」
とまったままの車のハンドルを握ってそう言った。横顔が寂しそうに見えた。
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