第二章 バスケット取引

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「お金を儲けさせて、喜んでもらえることもあったけどね。僕が相手にしていた顧客はさ、生活にはなんの不安もないそこそこ金を持った人たちで、損をさせることもたくさんあったけど、基本損をしようと思って投資する人はいないから、十分すぎるお金をもっと増やす手伝いをして」  人見さんはため息をついた。 「お金で買える物に、たいした価値はないのに」  人見さんが私をみた。 「だけど今の僕は、本当に価値があると思えるものに、お金を払っている」  人見さんは、微笑んだまま目を閉じた。 「こんな発見に出会えると思わなかった。人はきっと最後まで変化し続けるんだ」  目をあけた。 「律にはまだわからないと思うけど、いつか、僕の言葉を思い出して」  三ヶ月後には絵が完成すればそのうちまた別の仕事を始めて、もしかしたら遠くの土地へ行ってしまうのかもしれない。今のこのときの私を絵に閉じ込めることが人見さんの目的なのだ。  人見さんがシートをたおして、背をむけた。 「早起きしすぎたから、少し寝るよ」  背中が震えた気がした。  エンジンをかけたままでエアコンは効いているけれど、窓によると外の冷たさを感じる。  寝てしまったので、一人することもなくなった。  さっき見た朝日を思い出してみる。さっき撮った写真がみたくなってスマホを出した。  逆光でも表情はわかる。間抜け面と言っていたけれどそんなことはない。目を丸くした人見さんは貴重な気がした。
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