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ひとみさんの言うことは正論に聞こえた。だからと言って説得される訳にはいかない。
「私は、変なお店で働けません。お金がたくさんもらえれば、それが正しいんですか?」
みなれた気むずかしい顔になった。眉間に深いしわが刻まれる。
「変なお店で働けなんて、言ってないよね」
「じゃなきゃ、その時給おかしいです」
ひとみさんは目を丸くした。
「ああ、それでか。だけど最初に絵のモデルにって言ったよね」
絵のモデルの相場は知らないけれど、一時間四千円以上なのはやはり高いと思う。
「値段って、なんで決まってるか知ってる?」
「価値でしょう」
「まあいいや、じゃあ、価値って何で決まるの?」
「それは……」
すぐには答えられなかった。
「需要と供給のバランスだったり、いろいろだけどさ。値段イコール価値でもないしね。お金に換算できる価値の方が少ないと思うけど、お金はわかりやすいよね。特に土地なんかはさ、どうしても欲しいと思っている人が二人いたら、どんどん値がつり上がるんだよ。僕は、君の時間をその金額を出してでも買いたいって思ったから、提示したんだよね。君が足りないって言うなら、それ以上出してもいいよ」
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