9章 通し稽古

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「足腰がしっかりしているお年寄りだったら、崖の上からここまで、10分くらいで着くでしょうか」  紗川があっさり頷いたので安堵する。 「そうだな。急いでいたなら、このくらいでついてしまうかもしれない」  頷きながら、三枝は気づいた。  紗川は城跡への道のりの感覚について伝えたかったのかもしれない。 (翠さんの言ってるのをそのまま受け取ったら、どんだけ険しい山なんだって思うからなあ……)  実際に自分で確認しなければ、日本アルプスに登るような気持で挑まなければならないと思っていたかもしれない。 「見てみろ」  紗川に言われて示された方角を見ると、翠がステージに立っていた。 「あ、翠さん。足、大丈夫なんでしょうか」 「一晩休ませれば問題ない程度だったのかもしれないが……なるほど、あてられたか」  紗川がくつくつと笑っている。 「どういうことですか?」 「翠さんもこのオペラを成功させたいらしい。子供の熱意というものは、時に経験を大きく凌駕するからな」
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