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(え……)
三枝は茫然とルリカを見つめた。
死んだ常陸真奈美は、高校三年生だった。
自分と同年代だ。
「ルリカ……それは言わないでおこうって……」
「もう死んでるんだから、言ったって問題ないでしょ」
「でも……」
「男はこういうの、ほんっと無責任だよね。言わせなさいよ」
「……そんなに言いたいなら、言ってもいいけど……でも、俺、責任持てないよ」
「いいよ、あたしが言いたいだけだから――聞いてください、紗川さん」
「伺いますよ、黒沼さん」
「あの子――真奈美ちゃんは、孝雄に騙されて妊娠させられて、なのに孝雄には黙ってたんですよ」
「騙された……とはどういう事でしょうか」
ルリカは嫌悪感をあらわにした。
これだから男はとでも言いたげだ。
「ちょっと考えればすぐわかるじゃないですか。高校生の女の子ですよ? しかも、箱入りのお嬢様。そんな子が年上の男と付き合って妊娠したんです。騙されてないわけがないじゃないですか」
「そういう意味でなら、同感です。黒沼さんには相談していたのですね?」
「相談はしてないです。あたしにははっきりとは言わなかったけど、そういうのは分かるんです! 女同士だし」
同性でなければ分からないと言われてしまうと、男としては何も言えなくなる。
ましてや、今のルリカは気が立っている。
ヒステリックな女性には近づかない方がいい。
ごめんなさいと謝って逃げ出したい気持ちになったが、紗川が平然としている以上、三枝もそれに倣う必要がある。
「黒沼さんの他には、気付いている方はいらっしゃるのでしょうか。愛子先生や小林さんはいかがでしょう」
「あたしが言ってるだけじゃ信用できないっていうんですか?」
心の中で「こえええ~」と悲鳴を上げながら、三枝は何とか平静を務めた。
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