8章 夫婦役・小倉智樹と黒沼ルリカ

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「そうではありません、もしも同じように考えている人がいるのであれば、その方からもお話を伺いたいと思っただけです」 「……あたしにははっきりとは言わなかったけど、敦子さんには相談してたみたいですよ。敦子さん、病院勤めだし。いろいろ頼りにしてたみたいですから」  名前を聞いて思い出した。  小林敦子は病院で働いている。  彼女がNICUのパネルの前で言ってきたことを思い出した。  あの時は、前触れなく避妊の重要性を語られて焦ってしまったが、彼女の頭に高校生の妊娠があったのなら理解できる。 「ずっと仲間だと思ってたのに、孝雄のやつ、サイッテー……」  吐き捨てるようにルリカがつぶやいた時「ルリカー」と、下の方から声が聞こえてきた。 「おーい、上にいるのかー」  大島宏紀の声だ。  ルリカが興奮気味に話していたせいで、下まで声が届いていたのかもしれない。
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