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「やれやれ……」
二人の姿が見えなくなると、紗川は深くため息をついた。
平然とした顔をしていたが紗川もルリカのヒステリーには辟易していたのかもしれない。
彼女の気持ちはよくわかるが、あそこまで大騒ぎをされると困ってしまう。
「ああ……厭だ厭だ」
長い前髪をかきあげながら、眉間に皺を寄せている。
風が髪を揺らし、その吐息をさらう。
遠くを見つめる双眸は、獲物を探す餓えた獣のように見えた。
「なあ、三枝君。どうして人は感情で動くのだろうな」
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