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「三枝君。君の気持ちはよくわかるが、まずは挨拶をするべきだろう」
「えっ」
どうやら、ぽかんと口を開けたまま、少女を見上げていたらしい。
彼女はころころと笑って小さなつま先を揺らした。
すぐに折れてしまいそうな、華奢な足首だ。
「あ、あの。俺、三枝紬です」
「はじめまして、つむぎさん。わたくしは宝珠華翠と申します。この子――きよあきさんのお母さん代わりをしていた、いとこです」
何を言われているのかわからなかった。
しばらくの間、日本語を理解できなかったと言った方が正しい。
紗川を見て、もう一度少女を見る。
どう見ても彼女は三枝よりも年下に思える。
せいぜい同い年がいいところだろう。
彼女はなんと言ったのか、反芻する。
――きよあきさんのお母さん代わり
お母さんと言うのは、天使のことをさす言葉だっただろうか。
何かの間違いに違いない。
「あの……」
聞き間違いだろうかと思っていると、紗川が深くため息をついた。
「先に言っておく。間違いではない。こう見えて、僕よりも8歳年上だ」
「……えっと。え……ええええ????」
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