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「おばあちゃんって」
「きよあきさんの育ての親なのですもの。きよあきさんに育てられているつむぎさんからしたら、おばあちゃんでしょう?」
当然のことのように言われ、三枝は戸惑ったが、どう反論すればいいのかが分からなかった。
言葉だけを聞いていると正しく聞こえるからだ。
「さ、内容をお話いたしますね。きよあきさんは、ご存知ですから安心して聞いてくださいませ」
「もう知ってるんですね」
「ええ。お話をしなければ、依頼ができませんから。今わたくしがお話するのは、きよあきさんの手間を省くことにもつながります。それと、もしもきよあきさんにお伝えしていない情報があった場合に、それを埋めることもできます」
言われてみればその通りだ。
聞いておくメリットの方が大きい。
うなずくと、「よかった」と翠は微笑んだ。
「では、お話しいたします。先ほどキャストのお話をしたと思いますが……まずは、こちらをご覧いただけますか?」
翠はバッグから折りたたんでいた紙を一枚取り出してきた。『夢灯路こい物語』と書かれている。
「こちらが最初のチラシの原稿です。しかし、実際に配布されたものはこちらです」
続けて同じデザインの紙を出して、並べる。
「違いがわかりますか?」
言われて両方を見比べてみた。
桜と水紋と魚が描かれており、それに重なるようにして役柄とキャストが書かれている。
「わ、すごい。翠さんって音楽コンクールの最年少優勝者なんですか」
「ええ」
「何か、他にもいくつも賞を取っててすごいですね」
「お褒めいただいて、嬉しゅうございますが……つむぎさん、見ていただきたいところはそこではございません」
「あ、ごめんなさい」
両方の違いについて探すのだったと慌てて見比べる。
違いはほどなくして見つかった。
翠の名前のすぐ下が主人公の名前とその演者なのだが、そこが違っていた。
「古いほうは『常陸真奈美』……新しいほうは『黒沼ルリカ』ってなってますけど」
翠が静かにうなずく。
「常陸真奈美さんは死にました。正しくは、先ほどわたくしが歌っていた場所で殺された可能性がございます」
「え……」
三枝は目を見開いた。
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