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奏ちゃんにとってはただの姪っ子。それが現実だとしても、嫌だった。
そんな優しさを私は望んでいない。トオルの様に乱暴でもいい、もっと必要として欲しい。奏ちゃんは与えるだけで、私には何も求めない。
いきなりの反抗に、奏ちゃんはしばらく黙っていた。
「子供扱いしてるわけやないよ。心配なだけやんか」
「今日は一人になりたい気分やねん」
「りこ、またなんかあったんか?」
確かに『何か』はあった。だけど、奏ちゃんが心配しているようなことではない。
「大丈夫やから」
「そこまで言うんやったら、無理強いはせえへんけど、なんかあったら俺に電話するんやで」
電話を切ってすぐに私は作業にもどった。
自分の分と、奏ちゃんに渡す分と、ほぼ同じようにできあがった。瓶の中で、花は時を止める。綺麗に仕上がったと思う。
「叶わなかった恋に似ている」
プリンさんの言葉を口にしてみる。
ボトルフラワーは私の奏ちゃんへの想いだ。色褪せはしない。それでも、生きているように見えるだけで、死んでいる。
ユイカの想いのようには輝けない。
ユイカの痛みはどのくらいだったのだろう。
その痛みに耐えられれば、強くなれるのだろうか。傷つくことがわかっていても、前に進めるのだろうか。
インターネットでリストカットについてのブログを読みあさった。
目を背けたくなる写真に出くわし、慌ててウインドウを閉じることもあった。
しばらくして、気になるページがあった。
真っ黒な画面に、小さな赤い文字で詩が書いてあった。
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