それは突然かわりはじめる。

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 放課後、クラスで一番仲の良い陶子( とうこ)にお茶に誘われた。いつも決まって駅前のミスドに行く。  ミスドの店内はいろんな制服を着た人で賑わっていた。私はアイスコーヒーと定番のドーナツを、陶子は烏龍茶と季節限定のドーナツを選んだ。それぞれ黄色いトレーを持って、空きテーブルを探す。一番奥に二人がけを見つけた。私が壁際の席に座った。  横の席の人が、私たちのテーブルのはしを叩いた。 「河野(こうの )さんと高嶋さんやん」  ユイカだった。私服に着替えている上に、いつも以上にメイクが濃いので気づかなかった。暑いせいか露出度がやけに高い。胸の谷間が見えていた。テーブルの下には丸見えの太腿もある。一緒にいるのはさっきのトオルだった。制服姿のトオルは露出の激しいユイカとバランスが悪かった。改めてトオルを見ると、顔が小さくて子供みたいだった。目は幅の広い二重で、あつめの唇の下にはホクロがある。   大きな目で全て誤魔化せてしまうタイプだった。  トオルと目が合ったので、すぐに目を逸らした。  せっかく陶子とお茶に来たのに、ユイカ達が邪魔でろくに話も出来ない。無言でドーナツを食べる。  ちらっと横を見るとユイカは、チョコレート色のドーナツにかぶり付いていた。さっきから、教師の悪口やドラマの話を弾丸のように繰り出している。トオルは話を聞いているふうにみえない。ドーナツに手を出すわけでもなく、背凭れに全体重を預けるようにして、ただ壁を眺めていた。  またトオルと目が合った。すぐに目を逸らした。 「そのドーナツどうやった?」  陶子に話し掛けた。 「普通」 「そう。こっちも普通」  居心地が悪い。陶子に「そろそろ出ようか」と、提案しようとしたら、目の前に細長いドーナツが置かれた。さっきまでトオルの前に有ったドーナツだった。 私は、トレーに載せられたドーナツを凝視した。顔をあげてトオルを見るとなにごともなかったように、また壁を眺めていた。 「どうして河野にやんの?」  ユイカが言った。
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