とり

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とり

会社員が会社の窓から透き通るような空気の色をした空を仰いで願った。 できるならば鳥になりたいと。 鳥になり、あの空を自由に羽ばたきたいと願った。 人間でいたって何も良いことはない。 毎日の満員電車、 ニュースで絶え間なく流れる殺人事件、 嫌味な上司、 うまくいかない対人関係、 稼いでも稼いでも豊かにならない生活、 税金貧乏、 毎日毎日ストレスの繰り返し。 ベルトコンベアーで流されているような毎日。 窮屈で自由になりたくて、ストレスから逃げ出したくて。 そんなときにふと外を見たら鳥が気持ち良さそうに飛んでいたのだ。 風を浴びながら羽をまっすぐに伸ばして。 あぁ、鳥になりたい。生まれ変わったら鳥にしてください。と願った。 その会社員はその後人生を全うし、老衰で家族に見送られ人生を終えた。 なので、会社員の願いを兼ねてから聞いていた神様は、男のその願いを叶えることに決めた。 辛く厳しく、甘く楽しい人生を無事に全うしたご褒美である。     
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