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◇
「......はっ!」
日々谷はスマートフォンの鳴動で目を醒ました。バスカビル・クリニックからの電話がかかって来たようだ。
「はい、日々谷です」
眠たい目を擦りながら応答する。予約は昼からの筈だが何かあったのだろう、それにしても奇妙な夢だった。
バスカビル・クリニックで診察を受けて、悪夢に殺されると脅された夢だ。起きてから目覚めが悪い。
「バスカビル・クリニックの北真倉です。日々谷さん、その後調子はどうですか?」
「変わりは、ありません」
「良かった。精神安定剤と睡眠導入剤を処方しましたが、今の所血圧と心電図は安定されておられます。補聴器はつけておいて下さいね」
「ええ。つけてますよ」
「何か変わったことはありませんか?」
「変わった、こと?」
「日々谷さんに取り憑いた悪霊が動き始めてないか気になるので」
「悪......!」
日々谷が言いかけた時、部屋の扉が勢いよくドンと叩かれる。
「何か来ました! なんなんですか?」
「良いですか、日々谷さん気を強く持って下さい。巧くやれば、悪霊との闘いは闘う前から勝負を決めれます」
「待って下さい、なんのことですか?」
「喧嘩は勝つと思えば、必ず勝ちます! 最初から怖じけづいていたら、負けてしまいます!」
「そんなこと言ったって......」
日々谷がそう言っている間に、扉にばかんと穴が開けられ、そこから血走った目がこちらを睨んでいる。
「ひぃっ......!」
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