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影に潜み、運気を吸い取る。
誰も、気づくことはない。
あぁ、なんて極楽な。
けれど不思議だ。
何故、〝彼女〟から活気が消えない?萎れて項垂れるくらいしてもいいはず。
まぁ、吸いごたえがあるってことさ。
でも、そろそろ限界かな?
何かに苛立ちを覚えた様子の牡丹は、静かなる怒りを薄ら浮かべ、再び思春期真っ只中の少年に向き合う。そして、対抗心を秘めた鋭い視線で射抜く。
「ねぇ、緑青殿。一つ提案があるんだけど」
それを横目に受け取った緑青は爛々と光る翡翠を向け、不敵に笑い、それはどこか嘲笑っているかのようにも見える。
「何だ、遊んでほしいのか?ははっ、いいぜぇ~?お前らなんかに負ける気がしねー」
少女が、ほくそ笑む。
「あら、自信がおありのようですが、どうしてですか?私達は〝一度も〟手合わせしたことがないのに。ましてや初対面ですよ?」
「何言ってんだ、いいか?俺はお前らを一回打ち負かしてんだよ」
緑青に疑心の目が集まる。
「は?」
「どういうことですか、緑青?」
左次真の不満げな声と、若草の弁解を求める声が交差する。
それでも彼は雄弁に語ることをやめない。
「だからお前らなんかに負ける気なんてしねーって」
豪語までし始めた彼だったが、牡丹はそれでいいと、余裕の笑みを浮かべ、
「そうですか。なら手っ取り早く、花札といきましょう」
勝負を申し込んだ。
途端に緑青の表情が曇る。対称的な顔色を浮かべる両者の視線が交わると、余計に彼は眉間のしわを濃くした。
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