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「御曹司なんですか!?跡取りなんですね!お寺とは関係ありありじゃないですか!」
爛々と輝く瞳を添えた希望に満ちた顔だ。少年は目も当てられないとすぐさま視線を逸らし突き放す。
「それは家系の問題だ。俺には関係ない」
背を向けられた少女はぐっと溢れ出す高潮の気持ちを抑え、すっと真顔になる。そしてぽつりこう零した。
「…なるほど。ここまで廃れていたなんて」
「おい」
少年に鋭い突っ込みを入れられ、少女は慌てて誤解を取ろうと胸の前で両手をあわあわさせる。
「あ、違うんです。こっちの話で」
「いや、違くにゃいにゃ。このボンボン相当、廃れておるにゃ」
必死に弁解を試みる少女を無視し、化け猫は辛辣に言い放った。少年はさほど気に留めなかったが、かわりに化け猫の身内が静かに叱咤する。
「茶々丸!失礼なこと言わないでください」
怒っていても言葉に乱れがないその佇まいに少年が見とれていると、すっと向き直り頭を下げられる。
「あの、どうか私の話を聞いてくれませんか?私、どうしても叶えたいんです」
「俺には関係ない」
少年は真摯な頼みに背を向けた。彼女と目が合えば、断りきれないかもしれないと恐れたのだ。それを化け猫を静かに眺め、やがて肩を落とす少女の前に出てこう切り出した。
「童、花札はできるか」
「…花札?」
「茶々丸?」
化け猫、茶々丸の突飛な提案に、人間の少年少女は揃って首を傾げた。花鳥風月を表す、花札はこの二人の出会いに意味があるものだと示すことになるとも知らず。
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