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こいこいの勝負が終わってからいつの間にか猫の姿にもどっていた茶々丸は大きな欠伸で返し、眠たげに言う。
「いーから話すにゃ」
これ以上引っ張るなたわけ、と聞こえてきたため左次真は渋々声を潜める形で回答する。
「…祇園祭の前夜祭だろ」
「足りんにゃ」
「はいはい。人間とあやかしの交流の場。これでいいか?」
天を仰いでやけのポーズをとった左次真の回答に、青く輝く双眼がより一層光に満ち溢れた。
「ご存知なんですね。さすが境界に経つ寂凰院の跡取り!言い伝えでしか知られてない密久箕祭ですが、やはり舞台の当人はもっと重大なことを知ってるのでしょうか」
首を傾げ、探るような目で眉根を寄せる左次真に詰め寄った。彼はそれを視界に入れないよう変に力を入れ、
「………」
黙りを貫こうとした。けれど、
「その顔は知ってるようだにゃ」
すかさず煽る化け猫にその変な力は解かれ、やがて一気に脱力し、横目で両者に視線を流した。
「お前らは聞き出すのが上手いな」
ん?と小首を傾げた牡丹はちっとも悪気がないらしい。何事も無かったかのようにスっ…と身を引き、正座をし直した。続きを求める眼差しでそこにい続けている。
のらりくらりと兄貴みたいに交わすことはどうやらできないらしい。そう悟った左次真はため息一つ、長い長い、ため息一つ付き、冷めた目で告げる。
「はぁ…。先に言っておくけどな、俺は跡取りになることをまだ請け負ってない」
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