開幕

3/4
前へ
/144ページ
次へ
 水無月も中旬にさしかかる頃、(ほこ)の町内にはお囃子(はやし)の音色が流れ出す。  コンコンチキチン、コンチキチン♪  幼き頃から耳にしてきた者はこのお囃子を聞くと「あぁ、祇園さんやな~」と夏の訪れを感じるそうだ。  あの祭りが近いことを知らせるお囃子の音色は寂凰院(じゃくおういん)の跡取り、大鳳左次真(おおとりさしま)に懐かしくも切ない幼き頃の記憶を呼び起こす。そして、二週間前の出来事を改めて思い出し、一つ長いため息が出てしまった。
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加