疫病神の遊場

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「はっっっ、花一匁ですかぁ~」  言いながら絶望に平伏すかのように崩れ落ちた若草。その過剰なまでの反応に、その理由を理解していない左次真は若草を宥めつつ、花一匁について知ってることを確認した。 「なよなよすんな河童。花一匁ってあれだろ?」  花一匁。  二組に分かれて、歌を歌いながら歩き、メンバーのやりとりをする。あの子が欲しい。この子じゃなきゃ嫌だ。  値段をまけて悲しい売り手側と、安く買ってうれしい買い手側の様子が歌われているとされる子どもの遊び。  しかし左次真の知る花一匁と、牡丹の知る、あやかしの遊びは違ったようだ。牡丹の剣幕からしてただ事ではなく、若草の反応は過剰ではないことを物語っていた。 「あやかしの遊びは人間の遊びと違って具体性を持ち、具現化します。花一匁は中でも質が悪いですね」  つまり、疫病神と牡丹達で二チームに分かれ。メンバーのやりとり、すなわち掛札のやりとりをゲーム方式で行い。負けたら掛札は文字通り奪われ、勝ったらもらうことができる。それが例え、 「掛札に記憶があるとすれば」 「僕達に記憶がないことと辻褄が合います!」  そう、記憶だとしても掛札とすることで抜き取ることができる。だからこそ、恐ろしい遊びなのだ。  漸く理解した左次真だったが、ここで新たに一つ、疑問が湧き上がる。 「なら、疫病神の掛札は何だ?俺達はそいつの何が欲しくてゲームに付き合った?」
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