疫病神の遊場

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「………」  訝しげに、探るように、余裕をかます少女を凝視する。好奇心旺盛に爛々と光っていた翡翠は細められ、不満を語っている。 「どうしたんですの?」  挑発的な問いに、緑青は穏やかに、慎重に口を開く。 「お前らはそれが得意なのか?如何様でもする心算(つもり)じゃないのか?」  ぴくり。少女の眉が怪訝に反応し、 「私が、如何様を?」 「待った。俺がやる」  それを塗り替えるように毅然とした声が一同の視線を奪う。  ぱちくり瞬きする牡丹は一瞬驚きつつも、引き受けると前に出た左次真にこの取引の主導を委ねることにした。  すっ…と前に出た左次真を怒りを込めて睨み上げたのは緑青だった。明らかに動揺、苛立ち、焦燥を滲ませ、声を荒らげた。 「お前は駄目だ!絶対おかしいんだよ!運気もないってのに、どうやったら五光が決められるんだ!絶対、如何様だろ!」  緑青以外心当たりのない話に、一同は口を噤み、やがて牡丹がなるほどと頷く。 「左次真はどうやら私より先に花札で勝ってるようですね」 「みたいだな」  彼の証言から二人は、失われた記憶の中で花札で勝負し、左次真が勝ったことがあると推察した。しかし、まだ足りない情報を探るためにも勝負は不可欠だ。左次真は強気に、彼に選択肢を与える。 「で?牡丹と花札するか?」 「…お前の手口を暴いてやる」  憎悪に満ちた声。プライドを貶された少年が犬歯を剥き出しにすると、対して左次真は緩やかにそれを承諾する。 「おーけー。牡丹、花札を」
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