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翌日――
鼻歌交じりに学校から帰宅する加奈。勢いよく自宅のドアを開けていた。いつものように、誰もいないと思っていたのだろう。玄関を開けるなり、少々驚いたように小さい叫び声を漏らしていた。
下駄箱の横に彩がしゃがみ込んでいる。それも目と鼻の先。加奈より先に帰宅していることなど滅多にない。しかし加奈は目を合わせない。放り捨てるように靴を脱ぐと、「ちょっち、通るよ」とだけ呟き、そそくさと中に入っていく。
様子が何かおかしいのは、誰が見ても明らかだ。足の忍ばせかた。ぎこちない動き。本人は気付いてないが、不審者そのものである。その後姿を見つめる彩の目は細いが毎度のことである。特に声をかけたりはしない。
加奈は家の中に入るなり、台所に立つ母親の側に寄り添っていく。懇願するような表情。
「ねぇ、お母さん? この子、少し弱ってるけど……」
母親の顔色を下から覗き込む。上目使いで反応を伺っている。しかも目尻が軽く潤んでいた。
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