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「悪かったな。まさか生きてるなんて思わなくてよ……」
気が付くと、夢で僕を弔おうとした青年が、目の前に座っていた。
「あ、え……?」
少しだけ戸惑ったが、僕はすぐにまた夢の中だということに気が付いた。
「結構派手に投げちまったからな……痛むところは無いか?」
青年が心配そうに僕を覗き込む。
「うん……大丈夫。」
僕は、ゆっくりと起き上がると、しっかりと答える。
「……良かった。怪我がないということよりも、君が生きていたことが何より嬉しい。」
青年の笑顔。
曲がったことが嫌いそうな、誠実そうで真っ直ぐな笑顔だった。
「俺は竜吉(たつきち)っていうんだ。よろしくな、坊主。」
竜吉と名乗る青年は、僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。
そんな青年の名に、僕は驚いた。
「竜吉……さんって、いま何歳?」
どことなく似ている……とは思っていた。
「俺か?今年で21になる」
その右頬の傷。
右目の下の、ほくろ。
青年は、おじいちゃんの若いころの姿だった。
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