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何回目かの夢の中で。
またひとつ、集落が焼けた。
竜吉さんは、集落の人ひとりひとりを、丁寧に弔った。
ひとりやふたりではない。
集落ほとんどの人が、亡くなった。
「……来世は、争いのない世に生まれてくれ。」
墓標と言うにはあまりにも小さな石の前で、真剣に手を合わせる竜吉さん。
「どうして、他人なのに?」
僕は思わず竜吉さんに問うた。
「本当はまだ生きられた命、それが戦争によって無造作に奪われる。俺はそれが許せない。だから、犠牲になった人をこのまま、放っておくわけにはいかないんだ。」
ぎりぎりと歯を食いしばり、握った拳は石のように固い。
「我々は、全員戦争を望んだわけではないというのに……。」
僕は、勘違いしていた。
教科書で見る戦争は、国民みんなが結託し、一枚岩のように思えた。
でもそれは、違ったんだ。
「俺にも大切な人がいるのでな。出来れば一緒に……生き延びたい。」
きっと、それはおばあちゃんの事なんだろう。
好きな人と当たり前のように次の日を迎える。
それが、この時代は困難なことなんだと僕は知り、胸が痛んだ。
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