夢は夢のままで……

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「おじいちゃん、戦争には参加したの?」 参加、という言葉が適切だったかというと疑問が残る。 しかし、これまでの夢ではおじいちゃんは『いち市民』だった。 「赤紙は来たよ。でもな……」 赤紙、当時の召集令状。 この紙が届いたことに誇りを感じた者もいれば、絶望した者もいるらしい、と僕は聞いている。 「……行けなかったんだ。行こうとしたとき、戦争が終わった。」 おじいちゃんが、少しだけ悔しそうな表情を見せた。 おじいちゃんは、軍人として戦争に行きたかったのだろうか? 「おじいちゃんは、戦いたかったの?」 僕は、恐る恐る訊ねた。 「早く戦争が終わればいいと思っていた。でもな……祝言の前に、私は男として証が欲しかった。ただのいち市民のまま、ばあさんを迎えたくはなかった。……これは、男の見栄だな。」 馬鹿だろう?と苦笑いを見せたおじいちゃん。 僕はその眼差しが、『竜吉さん』と同じだった。 「おじいちゃん……立派だったよ?」 僕は、竜吉さんのしてきた行動を思い出し、思わず呟いてしまった。 そんな僕の言葉に、 「まるで見てきたような言い方だな!」 おじいちゃんは豪快に、笑った。 あの『夢』を見てから、僕はよりおじいちゃんに近づけた気がする。 いつしか僕は、眠ることが、そして『夢を見る』ことが楽しみになってきていた。
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