4人が本棚に入れています
本棚に追加
「おじいちゃん、戦争には参加したの?」
参加、という言葉が適切だったかというと疑問が残る。
しかし、これまでの夢ではおじいちゃんは『いち市民』だった。
「赤紙は来たよ。でもな……」
赤紙、当時の召集令状。
この紙が届いたことに誇りを感じた者もいれば、絶望した者もいるらしい、と僕は聞いている。
「……行けなかったんだ。行こうとしたとき、戦争が終わった。」
おじいちゃんが、少しだけ悔しそうな表情を見せた。
おじいちゃんは、軍人として戦争に行きたかったのだろうか?
「おじいちゃんは、戦いたかったの?」
僕は、恐る恐る訊ねた。
「早く戦争が終わればいいと思っていた。でもな……祝言の前に、私は男として証が欲しかった。ただのいち市民のまま、ばあさんを迎えたくはなかった。……これは、男の見栄だな。」
馬鹿だろう?と苦笑いを見せたおじいちゃん。
僕はその眼差しが、『竜吉さん』と同じだった。
「おじいちゃん……立派だったよ?」
僕は、竜吉さんのしてきた行動を思い出し、思わず呟いてしまった。
そんな僕の言葉に、
「まるで見てきたような言い方だな!」
おじいちゃんは豪快に、笑った。
あの『夢』を見てから、僕はよりおじいちゃんに近づけた気がする。
いつしか僕は、眠ることが、そして『夢を見る』ことが楽しみになってきていた。
最初のコメントを投稿しよう!