祝宴の最中の召喚

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祝宴の最中の召喚

「おめでとうございます!」 「おめでとうございます!」  支援者らの歓声の響き渡る中で、私は壇上に登り深々と頭を下げた。マイクを手に取り「ありがとうございます」と笑顔を浮かべる。選挙の事務所には既に多くの人々とマスコミが詰め掛けている。これほど気持ちのいい日は久々だった。 「この度の選挙での快勝は皆様のおかげでございます。一丸となって勝ち取った勝利を、今後の地方及び国政に生かし、日本国の更なる発展を目指す所存です」  再びわっと歓声が上がり部屋全体が揺れる。同時に舞台脇から司会が進み出てくると、私に筆を差し出し「さぁ、どうぞ」と促した。向かう先には机に置かれたダルマがある。 ――やっとここまで来た。いいや、これからが勝負なのだ。  私は目のないダルマを前に、万感の思いを込めて筆を握った。   私の名は鳥羽トバ響子キョウコ。日本国における衆議院議員であり、今回の選挙で四期連続の当選となる。もちろん小選挙区での代表であり、二位と大差をつけての当選だった。我が民民党の党首である首相からは、今回の政権での外務大臣の地位を約束されている。  同じく外務大臣であった父の地盤を受け継ぎ早数十年。私を所詮は世襲政治家、あるいは女と舐め、甘い汁を啜ろうとした輩は片端から失脚させてやった。公職選挙法違反や政治献金問題などのマスコミへのリークもあったが、最も効果的だった攻撃手段はセックススキャンダルだろう。  不倫にホストクラブにSM風俗まで、どれほど地位と名誉があろうと、人の下半身とは締まりのないものらしい。政敵の積み上げたキャリアが一瞬にして崩壊し、跡形もなくなるのはバベルの塔さながらだった。
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