26人が本棚に入れています
本棚に追加
当然恨みつらみを受けこちらの腹も探られる。が、私は法律への対策は完璧であり、献金のチェックは一切怠らない。男については鼻から興味がなく、結婚も夫も息子も家庭円満を演出する道具のようなものだ。
ただし道具の手入れは怠ってはいない。夫に対しては良妻、息子に対しては賢母であろうと勤め続けた。いくら私本人が潔癖であろうと夫が馬鹿な真似をする、あるいは息子がグレるなどと言うことがあれば、それも政治家として命取りとなってしまうからだ。
いずれは初の女性首相となり、この腐り切った日本の病巣を根元からぶったぎる。それが私の唯一の欲望であり目的だった。
「では、議員、よろしくお願いいたします」
司会の進行に私が大きく頷き、ダルマに目を入れようとした――次の瞬間のことだった。足もとに突如として数メートルの光の輪が生まれ、かっと輝くのと同時に中に穴が開いたのだ。
「……なっ!?」
悲鳴を上げる間もなかった。一気に逆らい難い力で吸い込まれ、私は筆を手放してしまう。
「議員、議員!?」
「何が起きたの!?」
――それは私が一番聞きたい。
そう思いながら私は意識を失った。
最初のコメントを投稿しよう!