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終電車
「それでは、お大事に。」
薬剤師の三栖あいりはそう言いながら、薬を受け取り、帰っていく患者さんに対して、お辞儀をして見送りました。
すると、調剤室の中から、
「三栖さん、取り揃えの終わった薬の監査をお願いできる?」
と、中で作業をしていた先輩の薬剤師から声がかかりました。
「はい、わかりました。」
といい、三栖は調剤室に入っていきました。
三栖が調剤室に入ってみると、その部屋の真ん中に存在する薬の監査をする机の上に、未監査の取り揃えられた薬のかごが山積みになっていました。
三栖はそれを見てあぁ大変だと他人事のように思ってしまいました。山積みになっていたとしても、手を抜くことはできないので、丁寧に監査をしていきました。薬の監査とは、取り揃えた薬と処方箋に書かれている薬が同じであるか、飲み合わせの悪い薬が一緒に処方されていないか、また、粉薬などが処方されている場合は、粉薬が分包されている袋の中に粉薬以外の異物が混入していないかなどを確認する作業のことです。
監査が終わると、先ほどの先輩薬剤師に
「三栖さん、今日は勉強会があるから少し残ってね。勉強会の後は、いける人で飲みに行くからね。」
と、笑顔で言われてしまい、愛想笑いをしながら、
「はい。」
としか、返事をすることができませんでした。
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