終電車

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 勉強会の後、飲み会に参加し、三栖が家路につこうとしたときには、時計の長針と短針がそろって真上を向いていました。 しかし、最終電車にはギリギリ間に合ったので、幸いでした。もし、電車に乗れなかった場合、三栖は徒歩で約2時間かけて家まで帰らなければならないところでした。  三栖は、自分以外乗客が見当たらない最終電車の中で、ぼんやりと考え事をしていました。今の仕事に不満があるわけでもない、人間関係にも問題があるわけでもない、忙しい薬局での日々をこれからずっと定年まで続けるのだろうかと漠然と思いました。たまに高校の友達から、結婚しましたという報告や、子供が生まれましたという報告が来るとみんなちゃんと変化のある毎日を送っているのだなと、なんだかさみしいようなうらやましいような変な気持ちになるのです。 こんな変化のない忙しい毎日を送っていて本当にいいのだろうか、本当にこれが私のやりたかったことなんだろうか、とぐるぐる考え込んでいると、だんだんと眠気がやってきました。三栖は眠気に逆らうことができず、降りるのは終点の駅だから、最悪車掌さんが起こしてくれるだろうからまぁいいかと思い、目を閉じてしまいました。
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