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Seemann《ゼーマン:船乗り》
会社の譲渡から五日後ーーー
カイエンは一人ナギの街に来ていた。
「私はどうしてあんな事を言ってしまったのだろう…」
ポツリと呟きながら会社に向かう。アイツに会うのはこの間の一回で最後にしたいと思っていたのに…
あれはナギからルズベリッジに戻って直ぐの事。
カイエンはどうしてもカミルが会社を経営する事に納得ができなかった。カミルに任せると決めた真意をエルドラにどうしても確かめたく、エルドラの仕事がひと段落した時に声を掛けた。
「エルドラ様…お話がございます」
「何だ?」
「どうして…アイツーーーいや、カミル様にアスラン様の大事な会社を任せようと思われたのですか?私の見る限りではどうしても適任とは思えません」
エルドラはデスクにバサッと読んでいた書類を置いてカイエンを見た。
「アイツはあんな感じだが、人を惹きつけて纏める事に長けている。周りでもアイツの悪口を言う奴は誰一人居ない。それに今まで仕事で色々な会社を見て来ている経験がある。経営としての知力より、人としての魅力と経験に今回は任せる事にした…」
「お言葉ですが、カミル様の人としての魅力は私には解りかねます。それに経営は全くの素人です」
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