Seemann《ゼーマン:船乗り》

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「でも…あの人は違いました。一人ずつ真剣に時々紙に『呑んで聞いてるから忘れねぇ様にな』って書きながら話を聞いてくれたんです……話したら『辛かったな』って言ってくれて…『もうそんな事しなくても良いようにしてやる』って。…ああやって笑ってる奴は皆んな話を聞いて貰った奴ですよ」 カイエンは部屋の床に散らばっていた紙の理由を聞かされて言葉が出なかった。余りの散らかり様に何が書かれているか見てはいなかったが、そんな事が書かれているとは思いもしなかった。 (今度お願いして見せて貰うことにしますか………皆んなでこうやって呑むお酒も悪くないものだ…寧ろ少し楽しい…) 酒を飲み進めながらふと、エルドラが言った言葉を思い出した。 『アイツはあんな感じだが、人を惹きつけて纏める事に長けている。周りでもアイツの悪口を言う奴は誰一人居ない』 (確かに、エルドラ様が言っている事は間違ってないですね……アイツ少しは見直しーーーーー) 突然、ガシャンと大きな音が響いた。驚いて酒場を見回すとカミルが酔っ払ってテーブルごとひっくり返して酔い潰れそうになっている上、全く知らない人に『ぶつかった!』『ぶつかってない!』と口論を始めていた。 「はあ…ほんの少しでも見直そうと思った私が間違いでした……やはりコイツの事は嫌いです…私がコイツの悪口を言う唯一の人になりますね…」 カイエンはカウンターに向かい、水の入った樽を持ってきてカミルに思いっきり頭からかけた。 「ぶはっ!…何すんだよてめぇ!」     
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