Anfang《アンファング:発端》

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「ああ、色々署名など必要な書類があるから準備しておいてくれ。書類等については親父が預かっている筈だ」 「畏まりました。日時はいつになりますか?」 「来週だ。列車で行くから切符の手配も頼む」 「畏まりました。丁度アールトンに近い街に滞在中の時に仰って頂けて良かったです。早速明日にでも旦那様の所へ行って参ります。ルズベリッジからだと丸1日近くかかるんですよ…書類を貰ってルズベリッジに戻るまで最低2日はかかるって事エルドラ様わかってます?」 カイエンは時に小言を言う事がある。それが自分の仕える主人だろうが年上だろうが関係ない。しかも正論を言ってくるので相手は反論しづらい。感情を殆ど表に出さないカイエンの小言口撃は相手の心にクリーンヒットする。 流石に主人に対しては斜に構えた物言いはしないが、間違った事が嫌いで納得できない事は徹底的に直す。良い意味では真面目で常に冷静だが、悪く言うと融通が利かず堅い。秘書の仕事はそんな性格のカイエンにはピッタリの仕事だった。 ある時は冷静さを失い暴れたエルドラに頭からワインをぶち撒けて説教し挙句の果てに『火を付けたらよく燃えそう』ととんでもない感想を言う事もある程だ。 「ああ。もっと早く言うべきだった…そう小言を言うな。済まない」 「解ればいいんです。解れば」     
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