255人が本棚に入れています
本棚に追加
/213ページ
「とっとと根を上げて泣きついて来ると思ったけど、何の音沙汰もないから見に来たよ。自分だって最初は協力が要るって言ってたじゃないか……それなのに無視だもんね…父が心配してたよ。そちらの男性は初めましてだね。ソイツの言った通り、兄のルンハルト・V・アーレンスと申します。…兄貴と言っても俺の上にヴァレス兄さんがいるから僕は次男だけどね」
「………カイエンと申します。時々ですがこちらを手伝ってます…」
「ふーん……よろしくね。カイエンさん」
ルンハルトはカイエンを見て優しく微笑む。物腰柔らかそうな口調だが、少し冷たさを感じる声だった。
暫く三人の間になんとも言えない緊張した空気が流れる。その空気を断ち切ったのはカミルだった。しかし、その声や様子もいつもの調子ではないのはカイエンにも明らかたっだ。
「別に、親父や兄貴の協力なくてもなんとかなってるから連絡しなかっただけだ。それに頼みたいのはヴァレス兄の方で、アンタじゃない。…だから、ちゃんとやってるって分かったら関わらないでくれ」
「心配で見に来てあげたというのに…つれないね。まあ、何かあっても父や兄さんが助けてくれると思うけど…………そんな事させないって分かってるよね?」
ルンハルトはカミルに近づき、カミルの耳元で囁く様に言ったので、会話の最後の方はカイエンには聞き取れなかったが、囁かれた一言でカミルの表情が明らかにおかしくなったのは分かった。
「まっ、暫くこっちにいるつもりだから。宜しくね、可愛い弟クン」
最初のコメントを投稿しよう!