Bruder《ブルーダー:兄弟》

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ルンハルトはカミルの耳元から離れ、明るく言うとそのまま動けなくなっているカミルの肩を軽く押す。いつもならビクともしないのにカミルは後ろに数歩よろける。そして、カミルが座っていた席に座って机の上に置きっ放しになっていた紙に目を通す。 紙には先程の喧嘩の原因になっていた積荷と料金の事が書かれていた。積荷の量や種類に応じて料金を決めているのだが、カミルはある得意先に『下げないと積荷は出さない』と強請られ、仕方なくカイエンに内緒で料金を下げていたのだ。料金を貰ったのをカイエンが確認していた際にバレて喧嘩になっていたのだ。 「…………もう少し取ってもいいと考えるけど、まあ、悪くない。これを考えたのはカミル……じゃないね?」 「……あっ。それは私が……」 こちらを見たルンハルトに一瞬反応が遅れてカイエンが返事をする。エルドラより口調がかなり柔らかいのに、エルドラより圧倒的な威圧感を感じた。 「そう、凄いね…。キミは今まで何処かで働いていたの?」 「いえ……。今もですが、ルズベリッジで宝石商のエルドラ・ジャスパー様に付いて秘書をしております。こちらには色々と事情があって…」 (『貴方と同じでコイツに任せておけないから来ている』なんて言えない…) カイエンの言葉もいつもの切れ味はなかった。 ルンハルトの琥珀色の目がカイエンを見る。眼光鋭いのは兄弟そっくりだ。カミルとはまた違う色気がある目にカイエンはそっと目を逸らした。     
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