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「ーーーーー直ぐ連れ帰りますからお待ち頂きますか?申し訳ございません!」
カイエンは深くルンハルトに礼をして港に向かって飛び出した。
「宝石商エルドラ・ジャスパーの秘書か………まるで猫だな。カミルに対して戯れたり逆毛を立てて怒るかと思ったら私を見て借りてきた猫の様に大人しくなる。……ああいう気高い猫ほど啼く時はイイ声で啼くから面白い」
ルンハルトはさっきまでカイエンがいて、慌てて出て行ったドアに目を向けた。
「私のモノにして啼かせてみたくなったな…。カミルから奪うというのもまた良い…今度こそ何もかも奪ってやる…さて…どうしようか…」
ルンハルトは一人になった会社で口角をあげてニヤッと笑った。今までの笑顔とは違いこの笑顔を見たら足が竦んでしまう様な冷たい笑顔だった。
港の方に走ってカミルを探す。雲の流れから明日から天候が崩れそうだという事で今日の出港は見合わせになった。船員達も早々に作業が終わり港に居るのは数人だけだった。その数人の中にオーバンを見つけ声を掛けた。
「オーバンさん!すみません。あの馬鹿っ…いえ、社長は見かけませんでしたか?」
オーバンは周りを見渡して首を横に振った。
「いえ…見てないですよ。船にも来てないですよ。どうしたんですか?」
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