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小高い丘は周りを遮るものが無いので雲の流れが良くみえる。
雲の流れが早い時は風が強くなる。また、黒い雲が近くにあれば天気が荒れる可能性がある。今日の雲の様子を見るともう少ししたら風が強くなるだろう。
カミルは丘の芝生に寝転んでぼんやり上を見上げていた。カイエンは躊躇いなくカミルに近づいた。カミルに対して遠慮がない。今更遠慮する相手でもないとカイエンは思っていた。
「何しているんですか?戻りますよ」
「………しばらくしたら戻る。放っておいてくれ」
「せっかくお兄様が来てるんですよ!それなのにあの態度はないでしょ!戻って謝ってください!」
「お前には関係ない……しばらくしたら戻るって言ってるだろ!」
「駄目です!今すぐ戻りますよ!!待たせているんです!」
カイエンは力づくでも連れて行こうと腕を引っ張ろうと更に近づき手を伸ばしたが………
パシッ!
乾いた音が響き腕が払われた。カイエンの腕が痺れる程の強い力だった。そしてその目は今まで見たこともない位暗く冷たい目をしていた。今まで何十回と喧嘩をしてきたが、その時の目は温かみのある目だった。
「…放っておいてくれと言ったのが聞こえなかったのか?…オレたち兄弟の問題だ、初対面のお前が口出しするな」
「でもっ!」
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