Bruder《ブルーダー:兄弟》

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もう引き止めるのは限界だった。カミルはカイエンを突き飛ばした。余りの力の強さにカイエンは蹌踉(よろ)めきその場に尻餅をついてしまった。今までどんなにカミルが苛ついていても人に対して手をあげるというはなかった。 「お前は…オレの言う事は一切聞くつもりはないんだな。自分の意見ばっかり通して毎回毎回オレの領域に遠慮なくズカズカと入ってくる。いい加減にしてくれ!目障りだ!オレの目の前にもう現れるな!」 カミルの言った自分に対する強い拒否にカイエンは言葉を失った。いつもの喧嘩なら『しょうがねーな』と渋々ながらも笑ってカイエンに折れてくれた。今回もルンハルトの登場に様子がおかしかったがカミルは折れてくれると思っていた… 今回は全く違った。笑顔が一切なく暗く冷たい目をしていカイエンを一切見ない。カイエンはカミルの目を見て声を振り絞った。 「…納得出来ません。納得できる説明をして貰えるまで私は此処に来ます」 「……なら、好きにしろ。オレはもう此処に来るなと忠告はしたからな……」 カミルはそのまま丘を下りて行ってしまった。カイエンはどうする事も出来ず、見えなくなってしまうまでカミルをずっと目で追うことしかできなかった。雲が早く動き風が強く吹き始めたが、カイエンはその場から動くことができなかった。     
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