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ルンハルトが締め上げる力を更に強くした。自分より細い体のどこにこんな力があるのだろうか?この力を生んでいる原動力があるとすれば、それは間違いなくカミルに対する憎悪だ。
「珍しく私に文句を言ってくると思ったら、あの秘書の事か…あの猫がお前に懐いてるとは到底思えないがね…」
「アイツは猫じゃない!アイツは…ぐっ!関係…ない」
「いや…アレは良い声で啼きそうな猫だよ。良い猫を拾ったなカミル。でもな…」
カミルは徐々に息苦しくなり、言葉を発するのも辛くなってきていた。それでもカイエンに対して手を出さないで欲しいと訴え続けた。
「あの猫はお前の手に追えない。もし、お前の言う事を聞かず再び此処に来ることがある様なら……その時は私があの猫を手懐ける番だ。分かったな」
ルンハルトは突き飛ばす様にカミルから手を離す。カミルは蹲り新鮮な空気を吸い込もうとするがむせ込んでしまう。
「かはっ!ーーごほっ!ーはぁっ!はぁっ!はぁっ…」
「あの猫は必ず私の元に来る。…お前の躾がなってないからな。お前じゃなくて私に尻尾を振る様子を見ておくんだな…じゃあ、暫く邪魔するよ。私の可愛い弟クン」
ルンハルトはそのままドアを開け出て行った。やっと呼吸が落ち着いたカミルは床を力いっぱい拳で叩いた。
「クソっ!頼むからエルドラの元に戻ってくれ!一回ぐらいはオレの言う事を聞いてくれ!…アイツに何かあったらオレは…オレは!」
その後も暫くカミルは蹲ったまま、ルンハルトの手がカイエンにかからない様に…カイエンが此処に来ない事だけを願っていた。
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