2人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
にこり、と。
言葉もなく目と鼻の先で微笑まれ、その有無を言わさぬ無言の圧力に開きかけた口をつぐんだ。
「すまない、隠し事は嫌いなんだが、僕はこれでも忙しい身でね。それにはやくこの子の手当もしたい。このままでは傷が残ってしまう」
「逃げる気か?許す訳ねェだろ」
連中も威勢を取り戻してきた。数だけで言っても二対四の劣勢なのに、相手は息をするように犯罪に手を染めてきた者たちだ。逃げることに経験を重ねてきた俺と違って、人を傷つけることに特化してきた奴らだ。
俺は手負いであるし、奇妙な男は未知数だとしても。
こいつらを振り切れる勝算はあるのか。
「許される必要はないさ」
それなのに、この男は笑う。
「僕は魔法使いだからね」
最初のコメントを投稿しよう!