Prologue

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 にこり、と。  言葉もなく目と鼻の先で微笑まれ、その有無を言わさぬ無言の圧力に開きかけた口をつぐんだ。 「すまない、隠し事は嫌いなんだが、僕はこれでも忙しい身でね。それにはやくこの子の手当もしたい。このままでは傷が残ってしまう」 「逃げる気か?許す訳ねェだろ」  連中も威勢を取り戻してきた。数だけで言っても二対四の劣勢なのに、相手は息をするように犯罪に手を染めてきた者たちだ。逃げることに経験を重ねてきた俺と違って、人を傷つけることに特化してきた奴らだ。  俺は手負いであるし、奇妙な男は未知数だとしても。  こいつらを振り切れる勝算はあるのか。 「許される必要はないさ」  それなのに、この男は笑う。 「僕は魔法使いだからね」
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