第一章 女神の愛し子

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- 1 兄弟 -  何の変哲もない昼下がりだった。  普段通りの時間に起き、日課の自己鍛錬をこなし、規定の時間に運ばれてくる食事を終えた後は、昨日の続きの範囲から歴史書を講師に勉学に励む。  代わり映えのしない毎日。五つ違いの異母兄も、三つ違いの異母姉も、最近はすっかり訪ねてくることもなくなって、孤独を唯一の友とした幼少期に戻ったみたいだと喉の奥で笑う。二人してあれだけ嫌がっていた婚約の話でも上手くいったのだろうか。それなら祝ってやらなくちゃな、と寂しさに蓋をして、フォレス――ルッツ・フォレス=エルヴァンシエルが再び本に視線を落とした時だった。 「フォレス。私だ、ロムルスだ。少しいいか」 「ソミュアよ。私もいるわ」  見計らったかのように、扉が叩かれた。
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