Prologue

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 あらん限りの力を振り絞って地面を蹴る。  朝から何も入れてない体から悲鳴が上がるが、ここで足を止めればその悲鳴すら出せなくなるんだと自分を奮い立たせる。  後ろから届く男達の怒声は、まだこちらを諦めていない証拠だ。 「ガキ!止まりやがれ!」 「道開けろ!殺されてぇのか!」  雑然とした通りを、小柄な体格に物を言わせて駆け抜ける。すれ違いざまに横目で見た人々の顔には、はた迷惑そうな表情が浮かぶだけだ。  捕まれば殺されそうな勢いで(事実そうなるだろう)子供が大人に追いかけ回されていようと、わざわざ救いの手を差し伸べるお人好しなんてここにはいない。  もしいたとしたら、そんな奴は次の日には野犬の餌だ。  この世界では自分の身は自分で守るしかない。  これが俺の住む日常。  でも少しだけ、様子の違った日常。
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