Prologue

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 後ろを確認すると追いかけては来ていないようだ。あんな奇特な姿では走ることもままならないのだろう――もしかして箒に乗って空を飛ぶからいいのか?なんて、宝石の出現以来なかなかに毒されてきている頭で考えた。 (あいつも追手の仲間だったのかな)  少なくともこの辺りでは見たことのない種類の人間だった。  僅かな隙間から見えた素肌は砂漠の陽射しに焼かれていない真っ白なもので、趣味はともかくひと目で上等な生地で仕立てられたのが分かる衣装。そしてまずお目にかかることのない、エルヴァンシエル王家に連なる者のみに現れるという蒼穹の瞳。  登場の仕方にこそ驚いたものの、ただ語りかけるだけで、こちらに危害を加えるような素振りはなかった。動揺のままに逃げ出さず少しは話に耳を傾ければ良かったのかもしれない。もう遅いだろうけど。  急激に視界がぶれた。 「ぁ、ぐッ……ぅ!?」  その衝撃のまま地面に叩きつけられる。遅れて襲ってきた右頬の強烈な痛みが、自分が殴られたのだと強制的に認識させられる。 「、っあぁあ゛ッ」  間髪入れず、次は無防備な背中に容赦のない圧迫感が襲った。背骨がミシミシと嫌な音を響かせている。無理矢理肺が潰されて空気が押し出される。息ができない。  あまりの突然の出来事に何の抵抗も出来ずにいると、頭上で下卑た声が上がった。
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