1人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
それからどれほどの時間が経ったか。
「お腹、すいた……」
空腹で目が覚めた私は、コンビニでも行くかな、と、ごそごそと寝床から起き出した。
ああでも、着替えて顔を作るのも面倒だなあ……としばらく惚けているうち、私はある素晴らしい思い付きを得た。
これは、料理の練習をする絶好の機会ではないのか。
なにしろどんなにひどい失敗作でも、全て自分で食べてしまえばいいのだ。
それで、万がいち上手くできたら、敬一さんにも食べてもらおう。
それでそれで、もし、「美味しいよ」と言ってもらえたら。
うふふ。うふふ。
作りもしないうちから幸せな妄想に浸った私は、さっそくキッチンに向かった。
メニューは、一択。
カレーである。
敬一さん曰く「日本で最も不味く作るのが難しい料理」だ。
下拵えに不備があっても、カレールーさえ入れてしまえば自動的に美味しくなるし、ましてうちの冷蔵庫には今、敬一さん特製のびっくりするくらい美味しいカレーペーストがあるのだ。
これなら私でもどうにかなるだろう。
じゃがいもと人参を用意する。あと具になりそうなものは……。
そうだ、冷凍庫に昨日買ったマグロの血合いブロックがあったっけ。安くて美味しくて栄養価も高い、私の大好物だ。
最初のコメントを投稿しよう!